高温度自着火とどこが違うのか
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High-Temperature Ignition
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 オクタン価標準燃料であるノルマルヘプタン n-Heptane, C7H16 の着火遅れを測定するのは容易でない.着火遅れが短いので,着火遅れ時間と同等のピストン圧縮時間を要する急速圧縮機 RCM で測定しても,それが定義本来の着火遅れであるかどうか疑わしい.

 着火遅れ時間に対して圧縮にかかる時間が充分無視できるだけ短い衝撃波管 Shock Tube を用いて測定することになる.衝撃波管では比較的低圧の場と高温とをつくるのは割合たやすい.しかし,その逆,比較的高い圧力場と低温自着火の温度領域を,そこでの着火遅れ時間以上の時間に亘って維持するのは容易でない.それをなんとか実現するために,衝撃波を Tailored 条件で反射させるという手段がないではない.

 右図は量論のノルマルヘプタン n-Heptane, C7H16 / 酸化剤混合気を広い温度範囲で着火させて,そこでの着火遅れを調べた結果である.ここでの酸化剤は 20 O2 + 80 Ar の擬似空気である.圧縮後の圧力条件はほぼ一定の 1 MPa に揃えられている.混合気濃度 [mol/m3] 一定下で温度がパラメータになっているわけではないことに留意されたい.往復ピストン式エンジンでの着火を考えるための資料としたいがためのことである.圧力 1 MPa というのは,高くはないが,なんとかそれに該当するという圧力である.

 Tailored に近い条件で衝撃波圧縮低温度自着火温度領域を得て,そこで着火遅れを計測するとき,奇妙なことに,着火が衝撃波管管端で生じないで,着火位置がやや管端から離れた内側にずれる.右図にはその着火位置も併せて示してある.着火位置がずれるのは 800 - 1 000 K のあいだであり,950 K あたりで著しい.着火位置が管端から内側にずれる理由についてはいろいろと調べているがここでは述べない.もちろん正常な "高温自着火" の範囲では着火は必ず管端で起こる.


 "低温度自着火とはどういうものか" というページでも述べたように,"高温度自着火" の着火遅れは,例えば,単純な系である CH4/O2/Ar (1) ならびに C3H8/O2/Ar (2) 混合気の着火遅れ τ についてつぎのようなアレニウス表示がなされる.



 この式を見れば,酸化剤 O2 濃度の影響が燃料 CH4 のそれに較べて相当大きいとか,希釈剤アルゴン Ar の濃度が変わっても着火遅れには影響がない,というようなことが分かる.こうした表示はその適用範囲が限られているからまずそれに注意しなければならない.この式が有効なのは 1500 - 2150 K であり,衝撃波管で実験がなされる範囲である.希釈剤アルゴン Ar の濃度が変わっても着火遅れは変わらないというのは,第三体の濃度がどうであろうと,燃料の濃度,酸化剤の濃度で着火遅れが決まる,と言っているわけであり,そのことは高温度自着火が有する重要な性質のひとつである.

 "低温度自着火では自分で自分の温度を上げないと着火しない" という特性なので,着火遅れは希釈剤濃度の影響を受ける.低温度自着火着火前反応,着火誘導期のいわゆる前炎反応 Preflame Reaction は Chemico-Thermal / Thermo-Chemical であるが,高温度自着火のそれは単に Chemical であり,自分で自分の温度を上げなくとも着火するだけの温度場が与えられている.


To be continued !

Still not fixed.


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