高過給・直噴火花点火機関の特性
 
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Mahle Downsizing-Demonstrationsmotor
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 高過給・直噴 Downsizing 機関がエンジンとしてどういう特性を示すのかという資料は必ずしも多くない.そうしたなかで,比較的公開されているのは表題の Mahle Downsizing-Demonstrationsmotor*1-8 や機械式 Supercharger メーカー Eaton が出している Supercharger で過給されたときのエンジン特性*9 である."過早着火 Preignition" のページでも Mahle Downsizing-Demonstrationsmotor の特性を借用して説明してある.

 Mahle Downsizing-Demonstrationsmotor は市販エンジンではなく,まだ試作機ながら,最も Aggressive な過給・直噴 Downsizing 機関であり,正味平均有効圧で 30 bar を達成している.こうしたエンジンの燃費等高線図が提示されているのは珍しいのでここにエンジン諸元,特性線図,燃料消費率等高線図を載せる.過給・直噴 Downsizing 機関では,市販されるもので,いまやリットル馬力 100 PS/?の時代になっているが,このエンジンはそれをはるかに越えて,163 PS/?, 120 kW//? であり,Downsizing Rate: 50% と謳っている.




 焼室形状はそれほど凝ったものではなく,下左図のように Head 側に Pent-roof 空間,Piston 側に Shallow-dish 空間を持つというものである.燃料噴射弁は上方に配置されている.吸気弁カム軸,排気弁カム軸には,下右図のように,ともに "Torqueboost CominCam" と称する Phaser 機構が設けられている.


 上の燃料消費率等高線図を見て分かるように,高速・高負荷で燃費の悪化がある.右の図でも白状しているが,"燃料冷却 Fuel Cooling" によるものである.

 過給・直噴 Downsizing 機関ではノックから逃れるのは容易ではなく,どの範囲でノック対策が苦しくなってくるかが右図,青の斜線で示される.低速では正味平均有効圧 BMEP 12 bar あたりから苦しくなる.無過給機関の特性線図 を見ると,まさに,この問題の無い領域だけになっていることが知られる.


 この Mahle Downsizing-Demonstrationsmotor では "High-load exhaust gas recirculation, Maximum EGR strategy" を謳っている.EGR は NOx 排出を下げ,燃料消費低減に寄与するだけでなく,Full load で燃料冷却をする必要がなくなり,この領域で 10% の燃料節減がなされるという.しかし,高負荷での EGR では,EGR ガスの温度を下げる必要があり,そのために水冷排気マニフォールド*6 が効果的であるとされる.さらに,Cascade 式の高性能吸気冷却器の開発*7 で空気温度を下げてノック発生傾向を凌いだという.

 けれども,燃料消費率等高線図では,この燃料冷却域とされる領域での燃費はまわりと同等までには下がっておらず,程度は下がったにしろ,依然,燃料冷却域なしではノックを防ぎきれていないことが示唆されている.上で,全域量論運転と言っていることからの乖離がある.この領域で生じるノックは低速ノックと同じ機構で起るものかどうかは分からない.いわゆる "高速ノック" にあたると考えるのが至当であろう.


 機械式 Supercharger メーカー Eaton が出した資料*9 に出ている燃費等高線図を示す.Turbocharger と Supercharger で過給されたときが比較されている.エンジンの詳細は与えられていないが,共に排気量 2 liter のエンジンであり,過給機を取り付ける前のものは同一仕様であると考えられる.上の列が Turbocharger で過給,下の列が Supercharger で過給されたときの特性である.



 最大トルクは 275 Nm になっており,これは正味平均有効圧 BMEP で 17.3 bar にあたる.上の Mahle 社の図と比較すると,最大 BMEP が比較的低いので,ノック抑制に大きく苦労するという状況にない.Turbocharger 過給の最良燃費は 230 g/(kW⋅h),Supercharger 過給で 240 g/(kW⋅h) である.Supercharger 過給の方が燃費等高線の間隔が広く,最良燃費点から離れたときの燃費悪化がやや緩やかである.ただし,最良燃費領域は必ずしも大きいとはいえない.車輌走行速度 100 km/h 相当では要求出力は 18 kW であり,そのときのエンジン回転速度を 2,000 rpm に設定するなら Turbocharger 過給が大きく有利である.しかしながら,加速要求があったとき,出力 29 kW まで 0.5 s で到達するようにするためには, Turbocharger 過給では 速度 100 km/h @2,500 rpm にギア比を設定しなければならないところ,Supercharger 過給では 1,800 rpm で済むので,結果的に過給による燃費改善は Turbocharger 過給の 9.8% に勝る 14.1% が得られると Eaton 社は言う.


 *1 Hancock, D. and Fraser, N.: A New 3 Cylinder 1.2l Advanced Downsizing Technology Demonstrator Engine, SAE Paper 2008-01-0611, SAE World Congress 2008
 *2 Ghanbari, M.: Injecting Innovation in Performance Engine Design, HTC Conference 2008, Session 15
 *3 Stephenson, M.: Engine Downsizing - An Analysis Perspective, SIMULIA Customer Conference, 2009
 *4 Christoffel, J.: Mahle's 1.2 L demonstrator shows potential of aggressive downsizing, Automotive Engineering Online, 20-7-2009, http://www.sae.org/mags/aei/6637
 *5 Taylor, J., Fraser, N. and Wieske, P.,: Water Cooled Exhaust Manifold and Full Load EGR Technology Applied to a Downsized Direct Injection Spark Ignition Engine, SAE Int. J., Engines 3 (1): 225-240, 2010
 *6 Korte, V., Fraser, N., Rückauf, J., Harms, K., Miersch, J., Brandt, M., Münz, S. and Rrauscher, M.: Das Mahle-Bosch-Downsizing-Demonstrator-Fahrzeug, 19. Aachener Kolloquium Fahrzeugund Motorentechnik 2010
 *7 Korte, V., Fraser, N., Taylor, J. and Dingelstadt, R.: Efficient Downsiziing for Gasoline Engines, Autotec Review, Sep. 2011, 31-36
 *8 Stehlig, J., Dingelstadt, R., Ehrmanntraut, J., Muüller, R. and Taylor, J.: Air Intake Modules with Integrated Cascaded Charge Air Coolers, 21. Aachener Kolloquium Fahrzeugund Motorentechnik 2012, 439-448
 *9 Walling, R.: Eaton TVS Supercharger for Downsizing, Engine Expo Stuttgart, 2009


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