歪みゲージ式指圧計 Strain Gauge-Type Pressure Indicator
Back to Car Related Page
印加電圧設定器 Conditioner / 電圧増幅器 Vortage Amplifier
Back to Homepage



 シリンダ内チャージの圧力をその時間経過として測定するには圧力変換器,指圧計 Pressure Transducer, Pressure Indicator, Pressure Pick-up が必要である.指圧計としてよく使われるものは,歪みゲージ式と圧電式であり,それぞれに長所,短所を併せ持ち,適材適所で使用される.右図は歪みゲージ式圧力変換器の一例である.水冷アダプタ方式ではなく,センサと水冷機構は一体であり,取付螺子はこの例の場合 M18, P=1.5 である.最近の機種では M14, P=1.25 のものが多い.
 
 歪みゲージ式圧力変換器の長所はその 低ドリフト特性 であり,長時間にわたって直流安定性が求められる用途,例えば直流的絶対圧力値を採りたいというときには必ずこれが使われる.ダイナミックレンジはそう広くなく,最高圧力 20 気圧用とか 50 気圧用,100 気圧用とかを別々に用意すべきである.大は小を兼ねるで使うと S/N 比が低くなる.出力インピ−ダンスは数百オーム程度と低いから,測定装置周辺の弱いノイズを拾うことは比較的少ない.一方,応答周波数帯域はそれほど高いところまで延びず,ノッキングの計測などには適さないが,固有振動数は通常 20 kHz くらいで,その半分あたりまで実用になるから,エンジンの通常燃焼計測にならほぼ問題ない.センサに張られた歪みゲージはホィーストンブリッジに組まれ,2-ゲージ式と 4-ゲージ式とがあるが,近年はほとんどが 4-ゲージ式である.エンジン指圧計となっているものの多くは水冷一体型である.

 歪みゲージ式圧力変換器は一般には測定器メーカから購入する必要があるが,それを駆動するための印加電圧設定器 Conditioner や電圧増幅器 Vortage Amplifier については,電気回路と部品を選び,慎重に配置すれば,自作しても測定器メーカの既製品と同等もしくはより精度の高い良いものを得ることも不可能ではない.  歪みゲージ式:共和電業

 圧力情報は電圧出力にして得るが,電圧出力を得るためにはブリッジは定電圧もしくは定電流で駆動されなければならない.エンジン指圧計では通常定電圧駆動である.そのためブリッジには印加電圧 Exciting Voltage をかける.

 印加電圧の与え方には右記のふたつのやりかたがある.左は単一電源で,ブリッジの片側を接地したもの,右側は印加電圧を正負二分割にしたものである.

 ブリッジからの電圧出力は,

で表される.これで圧力は電圧に変換され,電圧出力は印加電圧 Ee に比例する.とはいえ単位印加電圧あたりの出力感度はフルスケール時で (0.5 - 1.0) mV/V と大きくない.さらに,許容最大印加電圧も 10 V 以下である.

 ホィーストンブリッジにする意味は抵抗素子が温度係数を持っても,温度係数と温度が抵抗間で変わらなければ誤差が生じないところにある.抵抗素子は,上図のように,交互に伸張・圧縮となるように起歪筒に貼られ,素子一枚の抵抗値は 350 Ω くらいである.それゆえ,圧力変換器としての出力インピーダンスは素子抵抗一枚の抵抗値にほぼ等しい.たいていは大気圧近くの圧力でブリッジ抵抗がバランスして電圧出力が零 0 になる.それはもちろん厳密に大気圧でという意味ではない.しかし,歪みゲージ式指圧計では 4-ゲージの場合,いずれかの圧力で電圧出力が零 0 になり,変換器自体が原点となる圧力を持つ.

 ストレインアンプと呼ばれる市販品では,この印加電圧設定が,上図左に示す片電源で,その電圧は DC 3V とか 5 V というような固定値で数種類というのが多い.その場合箇々の圧力変換素子の変換定数の差を吸収するのに,後段の電圧増幅段のゲインを連続可変とすることで対応するようになっている.ここではその方法は推奨しない.

 箇々の圧力変換素子の変換定数の差を吸収するために印加電圧 Ee を連続可変とするのがよい.そうしてこの初段で,例えば電圧出力を圧力差 1 MPa あたり 1 V などと,きれいな整数関係に合わせる.また,印加電圧設定は上図右にあるような,正負二分割方式とする.右図がそれであり,この電圧供給には正電源電圧にならって負電源電圧が決まるという Tracking Voltage Regurator を使う.電圧設定ダイアルには固定機能のあるものを使う.

 上図左の片電源の場合,ブリッジのバランスが取れて平衡している場合にも電圧出力 eo+, eo- には共にブリッジ印加電圧の半分 Ee/2 なる電圧が出る.それを次の電圧増幅段で同相電圧を引算する必要があり,電圧増幅段の負担となる.正負二分割方式とすれば,ブリッジが平衡しているとき,電圧出力 eo+, eo- は共に零 0 である.また,Tracking Voltage Regurator なら仮になんらかの理由で印加電圧が変動したとしても,正負の電圧絶対値が変化しないから,直流ドリフトだけは防げるという利点もある.

 ブリッジの電圧出力レヴェルが低い上に差動出力なので,右図に示すような,差動入力計装アンプ Instrumentation Amplifier で 500 - 1000 倍に電圧増幅された後,記録計に送られる.

 Instrumentation Amplifier を使うのは,測定系の同相電圧除去比 Common-Mode Rejection Ratio, CMRR が高くなくてはならないからである.変換器から差動入力計装アンプまでのケーブルが拾うノイズは各伝送線で同相であるから,Instrumentation Amplifier を使うとそれを最も厳密に除去してくれる.それでもなおここにブリッジ印加電圧の半分 Ee/2 というような高い電圧を持ち込まないほうが良い.この電圧増幅段は 1000 倍というゲインを出さねばならず,特に低雑音,低ドリフト特性が要求される.差動入力アンプに大きな同相入力がある場合,それに加わる僅かな信号入力でアンプが飽和に至り,余裕がない.片電源印加電圧を推奨しない理由である.ゲイン設定抵抗 RG には可変のポテンショメータより固定抵抗が望ましい.アンプが IC で,ゲイン設定抵抗 RG が要るなら,特に良質の抵抗を選ぶ.

 いまの圧力が大気圧であるから,出力は 101.3 kPa に相当する例えば 0.1013 V が出力されるように,というような機能は,零バランス Zero Balance と称される.もちろん大気圧で出力を零 0 に設定してもよい.歪みゲージ式ではセンサ自体に原点を持つのでそうしたことが可能である.この機能は Instrumentation Amplifier の後段にゲイン 1 の加算アンプを付けるか,Instrumentation Amplifier の途中から入れる.この加算機能の付いた計装アンプ IC も多い.言うまでもないことだが,ブリッジの二辺に並列に可変抵抗を繋いで出力を零 0 に設定するというようなことをしてはならない.それはセンサの機能を殺すことになる.市販のコンディショナにその手のものがあった.嘆かわしい.

 このような圧力-電圧変換システムは "基準重錘型圧力計" を用い,指圧計に既知の圧力を加え,静的に検定・校正 Calibration される.Instrumentation Amplifier 単体の機能については,指圧計を繋がず,交流発信器をつないで,入力と出力とが同形かどうかオシロシコープで調べればよい.併せてアンプの周波数特性も把握しておく.

 システムとしては下図のようになる.

 右図は急速圧縮機を使った予混合気のピストン圧縮自着火実験例であり,1970 年代の仕事である.アナログの時代であった.オシロスコープの単掃引を銀塩フィルムを用いて撮影し,それを黒白反転させてある.これはその後 Xerox Copy を経ていて,コントラストが上がり過ぎてしまい,細いところが飛んでいる.n-Heptane,当量比 0.5,圧縮終り 1.27 MPa, 626 K である.あわせて自発光を光電子増倍管で計測しており,自着火熱炎が生じる前に多重冷炎の出現が観測されている.

 圧縮終り温度を,チャージの漏れがないとして,圧力の計測値から算出するので,圧力の絶対値が正確に測定されていなければならない.既知圧力幅を指圧計の検定値にそって二本の水平線でまず入力しておき,その後,既知の Farnborough 圧力信号を圧力履歴上にノイズとして現れるようにして自着火過程を記録し,圧力の絶対レヴェルと圧力振幅値の精度を保とうとしたものである.

 いまはここまで丁寧なことはしていない.歪みゲージ式圧力変換器は充分に安定であり,圧縮始めの圧力を既知とするだけでよい.記録はディジタル式である.チャージの漏れがあるかどうかは,圧縮行程のポリトロープ指数を毎回監視しておれば判断できる.

・ 注意事項

1. 冷却水は水位一定としたヘッドタンクから供給するか,減圧弁を介して元圧一定で供給すべきである.水道栓から直接繋いではいけない.
2. 大気圧以上の圧力について検定するだけでなく,負圧側も真空に向かって検定しておく必要がある.経年変化で,負圧側で直線性が落ちるということをかつて経験した.
3. 動的に過負荷がかかってダイアフラムが抜けたというようなものでも,修繕で直ることがある.

・ 製作上の注意事項

 計装アンプ Instrumentation Amplifier を,上図のように OP アンプ 3 個を並べて抵抗で繋ぐことで自作するということはお勧めしない.揃いの抵抗を入手するだけでも苦労する.かつてはユニパルスというところからモジュールが出ていたが,いまは無い.半導体メーカが出している Instrumentation Amplifier IC を購入するのが簡便でかつ良い結果が得られる.ゲイン設定抵抗まで内蔵されているものが望ましい.まずは Analog Devices の AD524, AD624 を挙げておく.上にも述べたが,ゲインは可変とせず,固定で 500 ないし 1000 とする.

http://www.analog.com/jp/prod/0,,759_782_AD524,00.html
http://www.analog.com/jp/prod/0,,759_782_AD624,00.html
http://www.analog.com/UploadedFiles/Data_Sheets/AD524.pdf
http://www.analog.com/UploadedFiles/Data_Sheets/AD624.pdf

 AD524 にはゲイン 500 という設定端子がないが,AD624 にならある.1000 倍のゲインで 25 kHz の帯域が得られ,歪みゲージ式指圧計の特性にうまく適合している.Analog Devices では "A Designer's Guide to Instrumentation Amplifiers (3rd Edition)" というのを最近出しており,基本的な概念を把握するのに役立つ.Web site でも Download できる.EDN Japan のオンライン記事 も参考になる.

 以下に印可電圧のための Tracking Voltage Regurator の例と出力の零点を上下に調整するために必要な Zero Balance 電圧発生回路の例を示す.かなり昔に作った回路なので,初期の OP アンプが使われている.他のものでも差し支えない.

 正の安定化電圧を µA723 でつくり,それと絶対値の等しい負電圧が出るよう µA741 で制御する.µA741 の正入力 3-pin は GND に繋がっており,負入力 2-pin は正負両出力からそれぞれ 4.7 kΩ で繋がっているので,正負の絶対値が等しいとき GND と同電位となる.μA741 の + 電源のところに発光ダイオードが入っているのは,作動表示の役割と,+ 電源を GND レヴェル以上に引き上げておくためである.発光ダイオードは二本直列に入れている.+ 電源を +15V へ繋いでも問題ない.この回路は一般の電源として使えるよう 350 mA 程度の電流容量になっている.ブリッジ印加電圧のためだけなら,この 1/10 くらいでよい.電圧設定用のヴォリュームには 10 回転ポテンショメータをあて,ロック機能のあるダイアルを付ける.



「言わずもがなのことだが,内容の一部であろうとも 無断転載を禁ず
引用する場合にはこのページもしくはこの Web site の所在を明記されたい
Copyright © 1995-2016, Y. Ohta, All rights reserved. Except as otherwise permitted by written agreement, the following are prohibited: copying substantial portions or the entirety of the work in machine readable form, making multiple printouts thereof, and other uses of the work inconsistent with Japan and applicable foreign copyright and related laws.

Back to Car Related Page
Back to Homepage