「内燃機関」 誌のこれまで |
「内燃機関」というのは,出版社「山海堂」が発行してきた内燃機関工学関連の記事を載せた雑誌もしくはジャーナルである.すでに過去のことになってしまっているので,正確には "あった" とすべきことである.「内燃機関」誌は 1995 年 (平成 7 年) の末に休刊となり,三年あまりの空白の後,「エンジンテクノロジー」誌として復活した.「内燃機関」誌休刊の反省から,山海堂内の編集ではなく,自動車技術会と日本機械学会の会員が編集責任を負うというかたちに変わった.しかしながら,「山海堂」が 2007 年 (平成 19 年) 12 月 03 日に大きな負債を表明して解散したため,九年足らずで再度休刊となった.その後しばらくおいて,同じような編集形態で,「エンジンテクノロジーレビュー」として養賢堂が背負うことになったと聞いて安心していたら,二年で潰えた.昔の「内燃機関」誌は学生も買っていたが,その後のものではそうではなかった.再興はむずかしかろう.以下これらを記録しておく.
通号
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巻 - 号 | 刊行年月 | |||
「内燃機関」山海堂 |
1
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1巻1号,創刊号 | 1937/09 | 昭和 12 年 9 月 | |
7 年 3ヶ月間 |
~
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86 ?
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8巻10/11号 | 1944/11 | 昭和 19 年 11 月 | ||
17 年 8ヶ月空白
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17 年 8ヶ月空白 | ||||
「内燃機関」山海堂 (復刊) |
1
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1巻1号,復刊創刊号 | 1962/07 | 昭和 37 年 7 月,以降月刊 | |
33 年 6ヶ月間 |
~
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6
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1巻6号 | 1962/12 | |||
7
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2巻1号 | 1963/01 | 昭和 38 年 | ||
~
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435
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34巻12号,以降休刊 | 1995/12 | 平成 07 年 12 月 | ||
3 年 3ヶ月空白
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3 年 3ヶ月空白 | |||
「エンジンテクノロジー」山海堂 |
1
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1巻1号,創刊号 | 1999/03 | 平成 11 年 3 月,以降,隔月刊 | |
8 年 9ヶ月間 |
~
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奇数月発行,「土木施行」別册 | |||
53
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9巻6号,以降休刊 | 2007/12 | 平成 19 年 12 月 | ||
1 年 4ヶ月空白
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1 年 4ヶ月空白 | |||
「エンジンテクノロジーレビュー」養賢堂 |
1
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1巻1号,創刊号 | 2009/04 | 平成 21 年 4 月,以降,隔月刊 | |
2 年間 |
~
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偶数月発行,「機械の研究」別册 | |||
12
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2巻6号,以降休刊 | 2011/02 | 平成 23 年 2 月 |
「エンジンテクノロジーレビュー」の巻番号は年ではなく,年度で付与されている.1 巻は平成 21 年度,2 巻は平成 22 年度,隔月刊,偶数月発行で二年間続いた.
第二次大戦前の「内燃機関」誌の何冊かは,昭和 39 年 4 月に学部四年生で研究室に配属されたとき,その辺に何冊かころがっていた.まだそれが残っているかどうかは不明である.今回は,国会図書館書誌検索 NDL-OPAC で調べただけであるから,実物を見て確認しているわけではない.
戦後復刊の「内燃機関」誌で,累積号数が累積月数より多いのは,「国産エンジンデータブック」などを含む多数の特集号が刊行されたためである.昭和 39 年 4 月,「内燃機関」誌,3 巻 4 号から平成 7 年 12 月の 34 巻 12 号まで,学生時代からずっと自分で購っていた.記事はもちろん玉石混淆ながら,当時,多くをここから学んだ.いくつかを当方も寄稿した.誌を一年分ずつまとめて大学の図書館に寄付した.図書館はそれをハードカヴァ付きバインドヴォリュームに製本した.それらはいまもあると思う.特集号については,そのすべてを購入したわけではない.昭和 43 年から 4 年間連載された「基礎講座 内燃機関の燃焼」などの産学への貢献は大きい.「内燃機関の燃焼に関する計測」というのも良かった.
「エンジンテクノロジー」は,校費で購入していた.「エンジンテクノロジーレビュー」は,停年後であることを慮ってくださってか,寄贈を受けていた.
学生が買わないという状況にあっては,商業誌として存続は望み薄.研究室に置いてあっても読んではいなかったであろう.隔月刊というところにすでに陰が潜んでおり,山海堂の倒産ということも同じ意味と解することができる.世紀の変わり目は多くの変化をもたらす境目になっていたようである.自分も含め,人が劣化した.
同じような範疇に入ると思われるドイツの雑誌 "MTZ - Motortechnische Zeitschrift" は年間 11 刊の発行で,発行部数はおよそ 6,000 部ということらしい.広告もかなり入っている.学術誌ではなく,技術誌ともいうべきものであって,学問そのものは表立っていない.個人購読料は年 199 €,学生は半額の 99 €.一号あたり普通の昼食ないし夕食一食分.出版社は長く Friedrich Vieweg & Sohn Verlagsgesellschaft mbH となっていたが,いまは Vieweg+Teubner Verlag.Springer Fachmedien Wiesbaden の系列に入っているらしい.姉妹誌 ATZ - Automobiltechnische Zeitschrift の発行部数も MTZ とほぼ同じ.彼我の体力差を知らずして大成を期すること能わず.