熱供給の等容度 Degree of Constant Volume, Gleichraumgrad
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 サバテサイクルを見れば分かるように,圧縮比一定のもとでは,サイクルの熱効率は,熱供給が上死点に近い時期になされるほど高くなる.すなわち,圧縮比一定のもとでは,サバテサイクルの熱効率はそれがオットーサイクルとなった極限において最大になる.(ガスサイクル については熱力学のページで解説してある.)

 サイクルが示す p-V 線図を,断熱圧縮変化過程,定容熱供給過程,断熱膨張変化過程,定容熱放出過程で囲まれた微小熱供給オットーサイクル (空気サイクル) の群に分割する.例えば,その様子は左図のようである.そのとき,あるひとつの微小熱供給オットー (空気) サイクルの熱効率は,熱供給のあるクランク角度 θ に対応した圧縮比 εθ = V1/Vθ を持つサイクルのそれであるから,

 上死点においてすべての熱供給がなされたときを最適とし,それと比較した熱効率低下割合を最適にどの程度近いかという尺度,すなわち等容度 Degree of Constant Volume, Gleichraumgrad は,クランク角度 θ における微小熱供給オットーサイクル (空気サイクル) について,熱効率を最適状況のそれと比較して,

 その微小熱供給オットー (空気) サイクルへの熱供給量を dQとすると,その微小サイクルが与える仕事量は ηth⋅dQ である.これを熱供給がなされたクランク角度位相で示したのが右の図であり,熱供給が行われるクランク角度全域にわたって積分すれば,

はサイクルが示す p-V 線図の面積になる.

 サイクル全体に供給された熱量を Q について,もしそれが上死点で供給されていれば, だけの仕事が得られていたはずであるから,サイクル全体についての等容度は,

 ここで,クランク角度が指定されたときの分割微小熱供給オットーサイクル (空気サイクル) の等容度 ηglθ はクランク角度の関数として予め計算しておける量であって,その様子は下の図のようである.そこを計算できるということを明示するために,

のように書くことができる.

 すなわち,クランク角度あたりの熱発生速度 dQ/dθ,それらを積分した全熱発生量 Q1 で "等容度" を全熱発生量 Q1 について表現できた.

 このように,積分まえの,クランク角度 θ に対応した等容度という量を考え,右のように図示* すると,サイクルへの熱供給が上死点から離れると,クランク角度で 20o あたりで 90 % くらい,60o では 50 % しか効果がなくなって,そのあたり以降に熱を供給しても急速に熱効率を低下させるということが容易に知られる.* 横軸クランク角度 θ からチャージの容積 Vθ を求めるには ピストン・クランク機構 のページを参照されたい.

 実際のエンジンで,シリンダ内圧力経過を観測すればそれぞれのクランク位相における熱発生速度 dQ/d&theta とそれらを積分,全熱発生量 Q1 らしき量を得ることはできる.そうした計測量をここで得られた等容度の表示式にあてはめることに意義があるのかどうかを考えてみなければならない.

 一般に計測される 熱発生速度 (熱発生率) Rate of Heat Release, ROHR は真の熱発生量ではなく,容器壁から逃げた熱量が差し引かれた量についてのものである.一方,上述の等容度の取り扱いでは,作動流体を狭義の理想気体とし,圧縮,膨張過程は断熱変化であり,それらを含め,系境界からの熱損失は考慮外であるから,熱損失のある実際の経緯をここでの等容度の範疇に納めることは困難である.

 基礎になっている "クランク角度が指定されたときの分割微小熱供給オットーサイクル (空気サイクル)" ではその熱供給位相容積は Vθ であって,分割それぞれで変化するものの,熱放出位相は常に下死点,そこの容積は常にV1 である.また,圧縮過程,膨張過程には断熱変化が想定されているから,"等容度" を扱うときの実際のサイクルも,その熱放出位相を常に下死点とする微小熱供給断熱オットーサイクル (空気サイクル) のみの集りとして表現し得るサイクルでなくてはならない.実際のサイクルにおいても,p-V 線図の下側履歴,つまり圧縮過程,ならびに,p-V 線図の右上履歴,つまり最後の熱供給以降の膨張過程,双方ともに断熱過程でなければ,そもそも微小熱供給オットーサイクルに分割することができない.

 等容度の表現として導かれた式には変数として熱発生速度しか出ていないからといって,それが熱損失をともなう実際のサイクルに厳密に適用できるというものではない.

 それでは,シリンダ壁からの熱損失を知り,圧力経過から得られた熱発生量に加え,真の熱発生量を扱って等容度評価をすればよいのであろうか.そうした熱損失を補ってもなお,等容度の定義というか,取り扱いの基本は,作動流体を比熱 cp, cv,ならびに比熱比 κ 一定とする狭義の理想気体を前提としているので,現実の作動流体については,比熱の温度依存,熱解離などの効果をどう考えるのかという問題に突き当たる.等容度とは,語の表面上の意味は,どれだけ上死点近傍で発熱しているかというものであるはずであるのに,計測された熱量を入れると,作動流体が狭義の理想気体か広義の理想気体かということから生じる差がすべて等容度というものに持ち込まれてしまう.また,作動流体を広義の理想気体として取り扱う場合には,熱効率そのものが単純な関係式で表現できない.作動流体を実在気体ではなく,広義の理想気体に限定したとしても,そのときの等容度とはどういうものかは容易に考えつかない.


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名古屋工業大学 機械工学科の 「エンジン工学」 という科目で講義していた内容の一部,もしくはそれをすこし増補したものである.
読者を想定している書きようであるかもしれないが,聴講者のある講義が基であるがゆえであり,本稿の趣旨は自分のためのこころ覚えである.

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