サイドスラストとピストンスラップ,Side Thrust and Piston Slap


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 往復ピストン機関のほとんどで,連接棒 Connecting Rod, Con rod がピストンに直接つながっている.ピストン・クランク機構は,ピストンの往復運動を軸回転運動に変換する機構であるが,連接棒の傾きにより,ピストンの側面はシリンダのいずれかの壁に押しつけられ,その方向が変化する.その様子を下の図に示す.もちろん,ピストンとシリンダとのあいだにある隙間をわざと誇張した模式図.ピストン側面がシリンダ壁を押す力を "側圧,Side-Thrust" という."圧" となっているが,圧力の次元 Dimension ではなく,力である.

 公称値としては,シリンダ径 Cylinder Bore とピストン径 Piston Diameter は同じものであるが,実際にはシリンダ径に対してピストン隙間があり,ピストンは左右のシリンダ壁に繰り返し衝突する.特に上死点直後の値が大きく,それが上死点前の方向から反転して当たるので,いわゆる "スラップ騒音" を発する.低速,低負荷時にエンジンから出る機械騒音の大半を占めるので見逃せない.下図でピストンを赤枠長方形で描いてあるところがその時期にあたる.

 また,特にディーゼルエンジンではこの衝突衝撃によって冷却水側の壁にキャヴィテーションが発生して,ピンホールを穿つ.シリンダ軸中心から左右を区別して,上死点直後に "側圧,Side-Thrust" を受ける方向を "スラスト側" と称する.単にどちら側に力を受けるかというだけでなく,下図のように,ピストンの首振りにも目をむけなければならない.


・最近のピストン

 右に例を示す.高さがほどんどないというようになり,軽量化も極限に近づいて,ガスリング一本 + オイルリング一本の構成になっている.どこかで "灰皿にもならない" という表現を見て,一瞬なんのことかと訝ったが,上下反転して机上に置いたとき,昔のピストンなら吸殻を入れるのに適当な囲いと凹みがあったということであるとしばらくして気づいた.

 ピストン-クランク機構との関連を今後記述して行く.

To be continued !


名古屋工業大学 機械工学科の 「エンジン工学」 という科目で講義していた内容の一部,もしくはそれをすこし増補したものである.
読者を想定している書きようであるかもしれないが,聴講者のある講義が基であるがゆえであり,本稿の趣旨は自分のためのこころ覚えである.

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