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道路が渋滞することに依る損失時間は我国の場合,年間 38.1 億人⋅時間,金額では年間およそ 12 兆円といわれている.この数字で勘定すると一人一時間の損失 3,150 円が出てくるのであるが,車輌の経費も入っているであろうからマァそんなものか.



エンジンオイルをどれくらいの頻度で交換するか
最近はロングドレイン Long-Drain Oil
エンジンオイルの粘度と粘度指数
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 エンジンオイルを 3,000 km ごとに換えるというような不経済なことはしない.これでも機械工学を修めた Engineer のひとりなので,機械がどういうものかということについておおまかな認識はある.製造者責任 (PL) が強く問われる状況下で,交換は 15,000 km ごとと指定されている.その数値はある程度の余裕を見込んだものであるにちがいない.年間何十万台と生産される市販車のエンジンは単品のレーシング用エンジンとは異なる.要するに普通の工業製品である.ほどほどのグレードの潤滑油が与えられてさえいれば,それなりの性能は維持されるし,寿命も確保される.

 また,エンジンオイルの性能低下は,タイミングベルト破断などのように,それが起これば一巻の終わりというような,ゼロ 0/イチ 1 の問題ではないから,早めに換えて安心を買うという性質のものでもない.それに,車輌全体から見ればエンジンは車輌寿命以上の耐久性を有するのが普通である.エンジンだけ可愛がってもしかたがない.

 1986 年ころ,米国の Volkswagen ユーザのあいだでエンジンオイル交換について一大論争が Newsgroup を介してなされた.VW は出荷時に,初期なじみが進行しやすい特殊オイルを入れているので,新車からの走行 5,000 マイルくらいまで,エンジンオイルを交換するのはよくない,という論調が多く流れ,それに賛成する人と反対する人とに分かれたのである.賛成派は交換しなかったがゆえにその後の調子,フィーリングが良いと主張した.数年後に Volkswagen Wolfsburg の研究者に会ったとき,それを思いだして尋ねてみた.答えは,出荷時のエンジンオイルは通常の VW 仕様,指定交換時期での交換を勧めたまでのこと,というものであった.

 運転者が受けるエンジンの調子,フィーリングといったものは,始動時の外気温と,始動後 30 秒間アイドリングするかしないか,極低速で 2 分間走行するかしないか,ということで大きく変わる.空燃比制御関係の記憶がしばらく続くからであろう.氷点近くの外気温で走り始めて 10 分経ったころは,今日のエンジンはいかにも静かでなめらかだと感じられるはずである.これはただ単にエンジンオイルの粘度が普段よりすこし高いうえに,空燃比がやや濃い側に振られていることに由来するにすぎず,あと 30 分も走ればそうした感じは失せる.粘度表示 (粘度指数の意ではない) が同じエンジンオイルの銘柄差はこうした始動時の条件差以上の認識を運転者に与えることはまれである.その差は 3,000 km 以上走ってかすかに差を感じることがあるかどうかという程度である.

 もちろん,エンジンオイルを交換しなくてもよいわけではない.かつてそういう問題で裁判所から鑑定依頼を受けたことがある.エンジン不調で何度もカムシャフトやロッカーアームが交換されて,ついにユーザがディーラを訴えた.M 形エンジンといえばお分かりになる方もあろう.潤滑油通路に閉塞が見られた.それにしてもこの事件では十万 km を走った間にユーザはエンジンオイルを交換するという認識を持ったことがないということであったし,二年ごとの車検時の記録もあいまいであった.運転は国家試験を経た業務上行為なので,運転者には業務知識が求められる.指定交換時期に意味がないわけではなく,それなりの意味を持っていたわけである.

 最近は Long-Drain Oil

 2000 年に Volkswagen/Audi は "VW 503.00" なる Long-Drain Oil 規格を新たに定め,新車にその規格のオイルを充填していると言っている.粘度表示 "0W-30" の100% 化学合成油であり,減った分だけオイルを補充すれば 15,000 km 走行まで性能が保証されるとのこと.実際には "Castrol SLX Longlife II, 0W-30" がそれらしい.それまでは "15W-40" など,暖機終了後 (100o C で規定) 粘度 "40" の鉱物油/半合成油が指定されていたことからの大幅な変更である.廃油の量を減らすのがその主旨のようであるが,思想が変わったといっていいほどである.さらに2004 年には 30,000 km 無交換性能保証のものも発表されているという.

 もとのドイツ語での説明には "Durch die Wartungsintervallverlängerung sind Ölwechselintervalle bei Ottomotoren (VW 503.00) bis 30.000 km und bei Dieselmotoren (VW 506.00/506.01) bis 50.000 km bzw. max. zwei Jahre möglich." とある.我国で 15,000 km / 1 年 と言っているのは実は本来 30,000 km / 2 年 のことであり,二倍もの日本版鯖読であるとわかる.また,ディーゼルでなら VW 506.00/506.01 規格油で 50,000 km / 2 年 という.もっとも,これらのエンジンオイルは上位/下位互換ではない場合も多いので,2000 年モデル以前のものには基本的には使ってはいけないことに留意すべきである.

 Volkswagen/Audi だけではなく,Mercedes-Benz, BMW, Opel, Porsche も指定交換時期延長という路線で動いている.VW 503.00/Mercedes-Benz 229.3, VW 506.00/VW 506.01/Mercedes-Benz 229.5 などをあわせて 「新世代の低燃費 ロングライフ 2 規格」 と呼ぶようである.BMW Longlife 01, Opel GM-LL A025/B025 規格は後者の最新規格に近いとのこと.オットーエンジンで 30,000 km なのに,ディーゼルで 50,000 km なのは,オットーエンジンにおいては液相ガソリンによる潤滑油希釈が無視し得ないものであることを意味している.

 Agip 7007, Aral SuperTronic LongLife II, BP Visco 7000 LongLife II, Castrol SLX LongLife II, Esso Universal LD, Fuchs Titan Supersyn SL, Mobil SHC Formula LD, Shell Helix Ultra X, Vaps Vapsoil 50601, Veedol Syntron LongLife II などがこれらの規格該当品である.ガソリンエンジン用とディーゼルエンジン用とに別れていない銘柄もかなりの数でているのも興味をそそる.さらに詳しくは,ここ を参照されたい.

 2000 年の導入以来何年も経過しているのに,この規格に該当すると銘打つエンジンオイルが我国の一般市場でほとんど見られないというのは奇異なことである."Mobil 1, Race Proven, SAE 0W-40", "Motul Specific, 0W-30", "Fuchs Titan Supersyn SL, 5W-30" くらいしかないうえに,けっこうな高値である.外に出れば "Elf Evolution CRV 0W-30", CAD12 (リットルあたりおよそ千円) というようなのも散見されるのにどうしたことなのだろう. 「ほどほどのグレードの潤滑油が与えられてさえいれば」 と上述したが,このレヴェルになるとそうとも言っておれず,きちんと性能が確保されたオイルを選んで入れないと技術的な整合性に欠けることになる.

 「Bora 取扱説明書」 251.551.BOR.70.09.04, 2004 年 9 月,を見ながらこれを書いているが,「エンジンオイルの説明」 p. 5-18 では VW 503.00 規格でロングドレインとしない場合でも VW 502.00 / VW 501.01 規格 (1997 年以降のオイル) 以外は認められておらず,かなり厳しいものになっている.つまり,VW 500.00 規格のオイル,"Esso Ultraflo, API SL, SAE 10W-40, 半合成油" など,ではだめと言っているのである.VW 純正の VW 502.00 認証油は "Castrol Syntec, 5W-40" らしい.

 それにしても,このロングライフ 2 規格の説明には 「減った分だけオイルを補充する」 とある.意識的にある程度は減るように仕向けてあるというようにも読める.20 年以上前ならいざしらず,このところ交換時期までにエンジンオイルを追加した経験がない.上の 「Bora 取扱説明書」 には "エンジンオイルの消費量は運転方法,交通状況によって増減しますが,通常 1,000 km 走行当たり 約 1.0 リッター程度なので", p. 5-19",とある.これでは 1,000 km 走行当たり 1.0 リッターの消費があたりまえのように聞こえる.それで,改めて 「VW Vento 取扱説明書」 953.552.1H2.70.04.95, 1995 年 4 月,を読み直してみると,"運転方法にもよりますが,オイル消費量は通常 1,000 km 走行当たり 1.0 リッター以内です.p. 123", という具合で,近い表現ながら,そこまで早くは減らないというニュアンスになっている.

 仮に初期充填量を 4.0 リットル,5,000 km 走行ごとに 0.5 リットルを補充するとすると, 30,000 km 走行なら交換までに 2.5 リットルを補充することになる.その補充した分はどこへ行ったかというと,燃えてテールパイプから排出されるに違いない.そのときの交換時廃油量は 3.5 リットルである.旧方式なら 15,000 km 走り,その間,少しは潤滑油消費があるとすると 3.5 リットルの廃油が出る.そこで4.0 リットルの新油に交換して次の新たな 15,000 km 走行とあわせて 30,000 km 走行とする.つまり,新方式では 3.0 リットルの大気排出と 3.5 リットルの廃油,旧方式なら 1.0 リットルの大気排出と 7.0 リットルの廃油である.較べるべきは,大気へ燃焼ガスとして排出される 2.0 リットルと地上で容器に入りの廃油 3.5 リットルとであり,いったいどちらが良いのかを判断しなければならないのではないか.あるいは,このロングライフ 2 規格への転換は,従来程度の潤滑油消費量で済むことを前提としないと成り立たないものなのではないか.マニュアルに書いてあるような 「通常 1,000 km 走行あたり約 1.0 リットルの消費」 は御免こうむりたい.量で燃料の 1% に相当するではないか.値段でなら消費燃料の 25 % 分が上乗せされることに相当する.一桁下の 「5,000 km 走行あたり 0.5 リットル以下」 が常識的な線であろう.当方の 2005 年式 Bora で 10,000 km 走行して,幸いなことに,消費量を確定できるほどの液面低下は認められていない.

* "Mobil 1, SAE 0W-40" については "VW 503.01" という VW 503.00 の一部上位互換規格で認証を得ていた.これは VW ではディーゼルエンジン潤滑油と認めていなかったが Opel ではディーゼルエンジン油として使ってもよいことになっている.VW 503 はガソリンエンジン油の,VW 506 はディーゼルエンジン油の規格であった.上述のようにガソリン/ディーゼル両用のものが多いが,"Mobil 1, SAE 0W-40" はそれに該当しない.かつては,米国製,VW 認証済の Quart ボトルが輸入され,600 円台と格安で売られていた."VW 503.01" の純正品は VW #J0V JD3 R02.

 現在すでに ロングライフ 3 規格 の時代に入っている.VW 504.00* がガソリンエンジン油の,VW 507 がディーゼルエンジン油の規格として動いており,それに対応する潤滑油も販売されている.それぞれ FSI 直噴ガソリンエンジン,Euro-IV 対応 DPF 付きディーゼルエンジンに合わせたものである.これらの新規格潤滑油は旧 VW 503, VW 506 と互換性を持つという.ただし,粘度は 0W-30 ではなく 5W-30 になっている.VW だでけでなく他のメーカも,BMW Longlife-04, MB Blatt 229.31 などの新規格に移行している.潤滑油の銘柄としては Castrol SLX LongLife III (Castrol WIV Longlife 3), (VW #J0V JD3 F01/F03/F05), Mobil 1 ESP Formula, Shell Helix Ultra VX, elf Solaris LLX/LSX, Fuchs Titan GT1 Longlife III, Motul Specific 504.00, Valvoline SynPower XL-III などがある.名称の中に WIV とあるのは Wartungsintervallverlängerung 整備間隔延長の意味.これらのほとんどがガソリン/ディーゼル両用である.Castrol SLX LongLife III の値段は欧州では 1 リットル 7.5 € くらいであり,リットルあたりおよそ千円である.

* VW 504.00 がどの程度に厳しい規格であるかを直感的に知るには Lubrizol が用意している Relative Performance Tool で他と較べてみるのが手っ取り早い.従来型の潤滑油 VW 502.00 などと耐摩耗性能を較べるだけで直ちに納得できるであろう.

 米国 General Motors では Oil Life Monitoring System, OLM というシステムを車輛に設けて,潤滑油の残存寿命をパーセントで表示するようにしている.エンジンが何回廻ったかを積算し,始動や高負荷走行に Penalty を与えて,重みを考慮した相当エンジン回転として加え,そのエンジン回転積算値に閾値を設定するという方式のようである.GM にいる研究者の話では米国では 10,600 miles (17,000 km) くらいが潤滑油寿命の評価となっており,旧来 "3000-Mile Oil-Change Theory" というのが一般に流布していたのが,これの導入で意識が大きく変わったとのことである.米国 Honda でも Oil Life System, OLS として,また,Ford もこれに準じた Intelligent Oil-Life Monitor, IOLM を導入している.


 エンジンオイルの粘度と粘度指数

 エンジンオイルの粘度と粘度指数については,工学とはとても考えられない間違った言辞が Network 上を飛び交っている.時間をつくって,そうした間違いについてコメントして行こうと思う.-> 次のページへ エンジンオイルの粘度と粘度指数,さらにはエンジンオイルの粘度と粘度指数 補遺



 いつ点灯するか

 日本では,どの地域へ行っても,夕刻の前照燈点燈時期が欧州各国に較べて極端に遅い.街路燈が点いてもまだ無燈火という車輛も多く見かける.雨天時に点燈しない車輛もまた極端に多い.左右,後方車輛の視認性が悪く,しばしば危険である.上の写真,左側はドイツの夕刻,晴天,右側はチェコで,午前中,雨天.
 オフィスなどはともかく,個人の家で話し込んでいると,薄暗くなっても室内燈を付けないのは欧州では普通のことであるが,日本では室内なら,日中かなり明るくても点燈する.内と外とが逆になっていはしまいか.


「言わずもがなのことだが,内容の一部であろうとも 無断転載を禁ず
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