急速圧縮機 Rapid-Compression Machine, RCM
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Rapid-Cpmpression Machine in Engine Combustion Laboratory, Nagoya Institute of Technology

 混合気を所定の温度 T,圧力 P までピストン圧縮で昇温・昇温してそこで留めるという装置である.混合気をその温度 T,圧力 P の下に置いて,自着火するまでの待ち時間,いわゆる着火遅れ Ignition Delay τ を計測する.

 往復ピストン式エンジンでは,圧縮始めの温度圧力・チャージ量の把握が困難であるが,急速圧縮機でならそうした初期状態が確定されているので,圧縮終りの温度圧力をかなりの精度で評価することができる.その評価された圧縮終り温度圧力と着火遅れとの関連を調べて自着火現象把握の一助とする.通常の往復ピストン式エンジンでは圧縮が終るとピストンが戻りだして膨張行程に移るが,急速圧縮機では,いわゆる圧縮上死点でピストンは固定される.所定の温度 T,圧力 P を維持せんがためである.

 上図が名古屋工業大学で使っている急速圧縮機の全体図,圧縮開始前で,右図はそれの圧縮終了後ピストン・シリンダ配置であって,圧縮比 8.5 の場合のものである.反応容積形状は完全な円筒状,パンケーキ型となるよう配慮されている.




 着火まえ反応が無視できるほどに充分低い温度圧力の初期状態から,着火まえ前炎反応が進む所定の温度 T,圧力 P まで,瞬時に持ち上げるのが本来の意図である.それを上の図の左側に示す.しかしながら,急速圧縮機はピストン圧縮で温度 T,圧力 P を持ち上げるものでああるから,高いピストン速度と瞬時のピストン運動の停止は互いに相容れない要求であって,現実には妥協が図られる.それが上の右である.圧縮が終了しピストンが停止した後,チャージが断熱に保たれるのが理想であるが,実際には壁から熱が逃げるので温度 T,圧力 P ともに減衰する.それが許容範囲内であるかどうかはそこで扱う自着火現象次第である.

 右の図は計測例であり,n-Butane/Air,当量比 φ = 0.65 の混合気を圧縮したときのものである.燃焼室壁に設置された 歪ゲージ式指圧計 で圧力履歴を,壁に設置された水晶窓を通して色ガラスフィルタを介して自発光を光電子増倍管で受けている.

 予混合気の自着火を扱う場合にはチャージの漏れがないことが求められるが,それが充分実現されている急速圧縮機は多くない.この急速圧縮機にはピストンリングとして運動用 O-リングが使われている.ニトリルゴムの通常品をはじめ,種々のオプションがある.特殊な実験でないときにはそれに僅かに耐熱シリコーングリースが塗布される.チャージの漏れがないことは,ヘッド周りを含むシリンダ全体を水槽に浸し,ピストン圧縮行程からピストン固定時期以降にわたって,水槽に泡が出ないことで確認されている.そういう検査を度々行う必要はなく,通常は,圧縮行程のポリトロープ指数を毎回監視しておればチャージ漏れの有無を判断できる.

 急速圧縮機を使う意義の第一は,前サイクルの残留ガスを含まないチャージが用意されることであり,続いては,他の装置に較べて,圧縮終りの温度 T をかなりの精度で評価できるということである.これらのことは,チャージの物性値が確定されており,圧縮開始時の温度 T,圧力 P を精確に把握できるということに依っている.仮想的な断熱圧縮温度なら圧縮実験をすることなく得られる.圧縮終りチャージの内部芯あたりは断熱圧縮温度に近いと主張する向きもないではないが,低温度自着火現象は必ずしもチャージの内部芯から発現するというわけではないので,一義的に賛成するわけにはいかない.圧縮終り圧力 P の計測値から気体の状態式にて圧縮終り温度 T を評価する方がより現実的である.この場合にはチャージに漏れがないことが不可欠である.予混合気ではなく,空気だけを圧縮し,圧縮終り近辺で燃料を噴射するというディーゼル噴霧自着火を扱う場合ならチャージの漏れは許されるのかもしれないが,圧縮終りの温度 T が不確かなままであることは言うまでもない.

Still not fixed.


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